1. 医療×ヨガ・ピラティスの可能性

現役医師が考える
ヨガ・ピラティスの可能性

JOTアカデミー・講師

あわ整形外科クリニック院長
阿波 康成先生

阿波 康成先生

現代医学が向かっている方向性

近年、西洋医学だけでは力の及ばない疾病の予防や健康の維持、さらには一人ひとりにあわせたオーダーメイドな医療を実現するために、補完・代替医療も必要であるとする『統合医療』が注目を集めています。私の専門である整形外科の分野は、もともと手術5割・リハビリ5割といわれ、治療の過程で、個々人の状態にあわせた運動の指導やアドバイスを中心に、必要な場合は温熱療法なども指示しています。最近では運動療法の一環として、ヨガやピラティスを取り入れる現場も増え、大きな意味での統合医療という視点は確実に広まりつつあると感じています。また、女性医師の増加にともない、小児科や産婦人科などでも、アロマセラピーやハーブが患者さんの心のケアに役立つとして、院内で利用する医院も増えてきています。高齢化社会を迎え、医療のあるべき理想の姿として、病気や症状の治癒はもちろん、さらにその先の、「心身の健康を維持すること」が求められていく中で、統合医療への期待は今後も高まっていくと思います。

現代医学

ヨガ・ピラティスが果たす役割のひろがり

近年ヨガやピラティスは深い呼吸を大切にした有酸素運動であり、現在、多くのフィットネスクラブでもプログラムに導入され、心身をリラックスさせる呼吸法で自律神経を整える効果やダイエット・アンチエイジング効果も期待できるとして人気を博していると聞きます。医学的な側面からしても、有酸素運動全般に言えることでもありますが、血流が良くなり、高血圧や心肺機能の改善、心血管疾患の予防、骨を強化し骨粗鬆症を防ぐなど様々な形で健康を維持できるメリットがあります。 同時に筋骨格系の強化も見込まれるため、リハビリに導入できる部分があると個人的に可能性を感じております。一人ひとりの身体の状態に合わせて運動強度を調節できるので、初心者や年配の方も始めやすく、実際に地域で開業されている病院では、治療の一環として、ヨガやピラティスを取り入れているところもあると聞いています。今後、予防医学の観点からも、心身ともに健やかに保つヨガやピラティスが重要視され、医療の現場と連携することも含め、その指導者の活躍の場が広がる可能性は十分にあると思われます。

ヨガ・ピラティス

アロマセラピーの可能性

病院へ一歩足を踏み入れた時、薬剤の匂いからくる不安や緊張で、より痛みを感じる気がすることがあるのではないでしょうか。最近では良い香りで少しでもリラックスしてもらえるよう、待合室にアロマディフューザーを置く病院もあるようです。嗅覚の認知は脳で行われているので、香りが脳に働きかけて自律神経に作用し、ゆったりとした気分を引き出すことは十分に考えられます。特に痛みに関しては心の持ちようといった点も大きいため、香りを積極的に利用していくのは患者さんにとっても良い結果を生むように思います。医師の間でも、アロマセラピーに関しては肯定的な考えを持っている人もおり、今の医療現場において、香りで心に働きかけるものとして、ここまで体系が確立されている物が他に無いため、今後、重要な役割を果たしていく可能性はあると思っています。アロマセラピーが医療行為として認められているヨーロッパ諸国と比べると、まだまだではありますが、産婦人科や介護施設、老人施設など、徐々に導入される現場も広がっています。おもに地域医療を中心に、アロマセラピーの効能を実感できる事例などが増えつつあるので、徐々にその事例が集まっていけば、将来的にはある海外の国のように調剤薬局でアロマが処方されるという未来も面白いのではないかと思っています。

アロマセラピー

スクールで学ぶということ

私は日本旅行医学会の認定医でもあり、海外での疾病の予防や医療事情にも関心を持っているのですが、以前にタイに行った際に知人からタイマッサージの体験を勧められ、その施術中に、的確な手の動きから解剖学的な知識を持っている施術者であると気づき、効果も実感したため、徒手療法もあなどれないと深く感じ入った経験があります。徒手療法という分野においても、解剖学的な知識をもとに行える人材が増えていくことで、通常医療の補完的な役割を担う部分も増えていくのではないかと思います。アロマセラピーやヨガ・ピラティスなどは誰もが気軽に始められるものでありながら、医療現場と連携して、人のよりよい健康的な未来のために貢献できる可能性を秘めています。統合医療の役割が注目される今、中途半端な技術と知識ではなく、専門スクールで確かな技術と知識を習得した人材を増やしていくことが、今後重要な課題になってくるかと思います。益々活躍の場が広がる皆さんの未来に期待しています。

阿波 康成先生

PROFILE阿波 康成先生

あわ整形外科クリニック院長、日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会運動器リハビリテーション医、日本旅行医学会認定医

高度外傷を扱う神戸医療センター中央市民病院整形外科にて勤務した後に大阪に戻り、済生会中津医療センター、長吉総合病院を経て現在、淀川キリスト教病院整形外科にて急性外傷、慢性疾患の両方の治療に携わりながら、後輩の指導にも力を注ぐ若手実力派ドクター。年間手術執刀数200以上、参加手術数400以上、年間外来数4000人以上。

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